はじめに
歯科業界の現状としては、一般的に、「歯科医師の供給過多」「過当競争下の歯科業界」等、業界の現状課題が漠然と理解されています。
業界の当事者による主に「ビジネス」つまり「かかる費用とリターン(収益)」という観点から、そのような歯科業界の課題がかなり具体的に述べられています。
歯科業界の現状をストレートにご理解いただけるよう、当歯科医師の持論をありのままに展開していただきました。
歯科業界で勝ちのこるためには、当歯科医師のように、医師としての匠の技術のみならず、「革新的な考え」「ビジネスセンス」「行動力」等が不可欠な時代であるのかもしれません。
歯医者という職業を選んだ人の選択理由のおそらくトップは、実家が歯医者であるという事か、それと同数かそれ以上に、医学部に合格できなかったというのが真の理由であると考えられます。言わない人が多いですが、ほとんどが医学部と歯学部併願受験だったようです。(感覚的には、医師の子供が多いように感じています。)そして、そのような医師(親)のほとんどの方が、歯医者が開業医師と比べて、まさか1/3以下の月収である場合が多いということをご存知ではないようです。医学部に合格できないなら歯医者にでもしたら身内にも聞こえがいいか、、、なんて。ところがなってみると医師の世界とは大きく異なることに気づく。
また、医療の世界では、一般論として正直に申し上げると、歯医者は二流、三流の医者と見られがちであるようです。これは、医師会、歯科医師会の政治力の差からもいえると思われます。そのため、歯医者の中には、医師に対して大なり小なりコンプレックスを持っている方もいるかもしれない。歯学部に進学が決まった時点で、年収的にも、勤務時間(の長さ)からも、その他様々な面からも、「敗者」なのかもしれません。そしてそういう私も「敗者」です。
予備校や高校の進学指導の先生、進路指導はよく業界の状況を調べてから実施してあげてください。
現状を踏まえた上で、私がもし進路指導であったら、医学部に合格できず将来歯医者としてがんばるよりも、一年間我慢して浪人してでも医学部に行けるようにがんばるよう、指導したくなります。
年収300万以下の歯医者のワーキングプアー問題
世の中、歯医者は儲かると思っている人がまだまだ多いのでびっくりしてしまいます。
歯科業界で、今もちきりの話題があります。
それは、歯医者のワーキングプアーの問題です。
実は、歯医者の5人に1人は、年収300万円以下のワーキングプアーであると言われています。
歯医者は6年間大学に行き、歯科医師国家試験を合格しても、卒後、1年目の月収が約16万円位、2年目からは約20万円前後、3年目か4年目からは30万円前後、そこから先はバラバラです。
月収100万円以上あるドクターもいれば、30万円以下のドクターもいます。
多くの開業歯科医は月収が60万円~80万円でしょうか。
また、特に歯医者はボーナスや退職金はありません。
勤務時間からしても、4年制の大学を卒業して大手企業に行った方は、有給、ボーナス、退職金などがありますし、多額の医療訴訟におびえなくてもいいですし。
では、車は、ベンツやBMWに乗れるのはなぜでしょう。
それは、自営業者という立場上、通勤用や営業車として、経費処理できるからです。コンビニのオーナーや、賃貸マンションや駐車場オーナーが乗っている場合と同じでしょう。
ワーキングプアーの原因は多様であり、歯科医師過剰問題だけではありませんが、歯科医院の倒産が多発していることから言うと、歯科医師の過剰が直接の原因であることは、疑いようもありません。
歯科医師になるためにかかるコスト
歯科医師になるには、中学、高校、予備校、塾、家庭教師などの学費がかかります。一般的には、理系や医歯薬系のコースを選択し、受験コースとしては、最も金額が高いコースを経て、医・歯学部を受験します。
私学の医学部歯学部の学費は通算して、おおむね5,000万円以上かかるでしょう。
入学金として、1,000万円、学費として、600万円/年が6年間もかかります。
歯医者も医者も、なるためのコストはほぼ同じです。違うのは卒後からです。
歯科医師国家試験
国家試験は、歯医者の場合と医者の場合では目的が大きく異なります。
医者は、小児科や産科、救急医療などの危機で、医者大増産が叫ばれています。そのため、国家試験はいわゆる本来の意味の資格試験なのです。
しかし、歯医者の場合、国は歯科医師過剰に関して、国家試験を用いて需給調整することを目的に資格試験を行っていると思われます。
このため、歯科医師国家試験浪人が大量に発生しています。受験生の親からすれば、学費を5,000万円も払って、子供が歯医者になれないなんて。。。大学側も、国家試験浪人の数が多かったり合格率が低かったりすると、大学の人気や入学希望者数に悪い影響を及ぼす可能性があるので、合格率をあげるために国家試験に落ちそうな人は、毎学年の10%から、多いところでは20%を留年させているという話です。歯科医師の経歴をよく見ると、大学に8年いたという人は少なくないようです。
国家試験の浪人にもお金がかかります。東京、大阪など国内数カ所に歯科医師国家試験予備校というのがあります。特殊な一部の人しか行かない予備校なので、学費が高く一年浪人するごとに学費が400-500万円弱かかるとのことです。地方の浪人生は、国家試験予備校のある東京での下宿代もかかります。
歯医者のキャリアパスは、開業か
歯医者はなぜ、町に溢れているのでしょうか?医学部であれば、卒後は色々な診療科を選ぶことができます。しかし歯医者は、あったとしても、矯正と小児歯科、口腔外科しかありません。ですから、大量に開業医が発生し、カニバリゼーションが起きているのです。そのため、個々の歯科医院の売上が減少し、歯医者の給料も下がる傾向にあるようです。
また歯科医療機器業界の体質にも問題があると思います。歯科関連商社や歯科器材メーカーにとって、売上と利益を最も上げるイベントは、新規の開業案件なのです。このため、商社や機材メーカーの営業担当者も、営業成績を上げるために、勤務医に開業をすすめることがあるようです。
歯医者同士で、「囚人のジレンマ」を起こしているのです。
歯医者の平均月商
厚生労働省の発表では、全国の歯科医院の平均月商は300万円前後((注)社会保険診療であり自費は含まれない)であるということです。しかも、東京では超過当競争でさらに低く200万円台とのことです。自費診療で儲かっているイメージのある歯科医ですが、1本10万円近い自費前歯を毎月何本も手がける歯科医は一部でしょう。
売上300万円から、銀歯の加工費、高額の医療機器の費用、人件費、高い医療材料費、借金や税金を引くと、はたして月収はどこまで残るのでしょうか?
大手コンビニエンスストアの平均的な店舗は、1日55万円以上売り上げると言われています。つまり、そのような店舗が5-6日営業すると、歯科医院の1ヶ月の売上と同じ売上を達成します。歯科医院の場合、歯科医師免許や歯科衛生士免許、レントゲンなどの高額な医療機器を必要とします。水道や排水の工事もかかります。
大手コンビニエンスストアの店舗の平均月商は1,500~1,600万円、歯科医院の平均月商は、300万円前後投資額は、どちらも同じくらいで、5,000万程度です。
もしあなたが高校の進路指導の先生だったら、どのようなキャリア提案をなさいますか。
歯学部が、死学部と表現されてしまわないために。









